ARTIST Interview 谷 小夏× QUO

谷 小夏さん

「本当にずっと絵しか描いてこなかったんです」
そう語るのは、女の子や動物を描いた作品で注目を集める
イラストレーター、谷小夏さん。魅力的な個性をもつ作品には、
SNSでのファンも多い。さまざまな画材を使いこなす
制作の舞台裏、そしてこれまでの創作活動を支えてきたものとは。

QUOカード

「でも挑戦したいとずっと思っていた。
それで描いてみた1枚目なんです。」

普段、どのように作品を制作していますか?

今は1日10時間くらい、絵を描いています。家にこもりっきりで、1日に100歩くらいしか歩いてないときもある(笑)。
描くものやテーマは、個展ごとに考えています。人物を描いていることが多いですが、基本的には自分が好きなもの、今描きたいものを描いています。女の子が多いのは、三姉妹だったのと、女子校に通ってたり、本当に周りが女の子ばっかりだったからかもしれません。女の子を描くのが好きです。

今回、選んでいただいた作品のテーマは。

このときは美をテーマにした個展に向けて制作していて、お洋服やお化粧といった装飾的な美をテーマに描いていました。
この絵は、本当に自分で気に入っていて。全部かわいく描けたなぁと思ってます。顔も、背景の色も好き。この作品で、初めて本格的にアクリルガッシュに挑戦したんです。高校で使ったことがあったんですが、すごく苦手意識があって。使い方がわからない画材として自分の中にいて、でも挑戦したいとずっと思っていた。それで描いてみた1枚目なんです。他の絵よりも時間をかけて、何枚も失敗して。でも、その分すごく思い出に残っています。まだ画材に慣れてないからこそ、描くことが作業にならずに、丁寧に描けた。今のところ人生でいちばん気に入っている作品です。

インタビューを受ける谷 小夏さん

「そういうのをしてるうちに、
スランプを脱出できたりするんです。」

画材を変えるきっかけはあったんですか?

スランプになると画材を変えるんです。色鉛筆で描いていて、スランプになって。もう何を描けばいいかわかんないってときに別の画材を試したら、色鉛筆でできなかったことができた。逆に、色鉛筆でできたことができないから、別の方向からの工夫が必要になる。そういうのをしてるうちに、スランプを脱出できたりするんです。新しい画材を試すのが好きで、たくさん試しています。

色鉛筆での作品も素敵です。なぜ色鉛筆で描くようになったんですか?

高校時代の美術部では油絵を描いていて、ひとつの作品に半年ぐらいかけてたんです。でも大学に入って、隣の席にすごくいい絵を描く子がいて。その子が2分くらいで描いたキャラクターが、もうかわいい。私が半年かけて描いた絵と、その子の2分の絵が、同じぐらいの良さがあるな。そう思ったときに、私も早く描けるようになりたいと思ったんです。画材の中では色鉛筆が一番手軽なので、そこから大学生の間はずっと色鉛筆。早く描くことをテーマに、たくさん練習していました。

colored pencil

今はどんな画材を?

最近ハマってるのは、この作品でも使ったアクリルガッシュ。あと去年の年末にiPadを初めて買って、デジタルに挑戦しはじめました。今までやったことなかったので、楽しく描いてます。
デジタルって、結構何でもできるんですよ。全然まだ使いこなせてないんですけど。でも、やっぱりアナログで描いた絵が好きなので、デジタルで描いてるときも手描き感を残そうとしています。やろうと思えばどんどんヌルヌルした、CGみたいな絵になっていくんですけど。それじゃなくて、ちょっと手描き感が残るようにしようと思って、あえて塗りあとを残したりしています。

acryl gouache
digital paint
digital paint
インタビューを受ける谷 小夏さん

谷さんのイラストには、
SNS上でもファンが多いですよね。

今年からまともに更新しようと思いはじめて、今やっとちゃんと運営してるという感じです。見てくれる人がすごい増えるので、良い面が多いかなって今のところ思ってます。ただ、SNSを見てほしいからやるというより、個展に来て欲しいから続けています。

デジタルの作品は元からモニターで描いて、みんなもモニターで見るので、SNSに載せてもそのままの良さを見てもらえるんです。環境が変わらないので。でも、手描きのものは原画をスキャンして画像にしたときに、もう全然サイズも違うし、やっぱり良さがかなり消えちゃう。なので原画の良さは、本当に原画を見てもらうしかないなって思っています。

見る人のことも考えながら
制作しているんですか。

制作のときは、なるべくお客さんのことは考えないようにしているんです。お客さんの期待に応えようっていう気持ちでつくっちゃうと、新しい挑戦ができなくなってくる。なんか、がっかりされちゃうかもと心配になったり。だから制作のときは、むしろもうお客さんの期待を乗り越えていこう!置いてきぼりにしていこう!みたいな気持ちで、なるべく考えないように努めて描いています。

作品の説明をする手元の写真
谷 小夏さんの作品

女の子たちの服が印象的です。
モチーフはどこから?

世界史が好きなんです。それで古代文明を調べてると、もうめっちゃ洗練されてるんですよ、ファッションが。レリーフや壁画で描かれてる服もすごいオシャレだし、博物館に残っている当時の人が着てた服もめっちゃ綺麗。だから基本的には、そういう古代文明の服をそのまま描いてるんです。
メソポタミアあたりの文明の服とか、すごくかっこいいんですよ。特にシュメール文明の服。当時の衣服は残ってないから、絵や石像になったものしか見れないんですけど。こんな服売ってたら欲しいな、と思ってます。

これから力を入れていきたいことは。

私は動物全体が大好きなんです。数年前から動物の絵を描いて、その絵の売り上げを犬や猫の保護施設に寄付するっていう活動を始めています。
あと、家にセキセイインコのみっちゃんっていうのがいるんですけど、かわいいし、すごく感情が豊かで。そんな小さい動物にも感情があって生きている。そのことを気づいてもらいたいと思って、絵日記のようなマンガをブログに描きはじめました。

実は鳥って、犬や猫ぐらい賢いし、その子によって性格も違うし、いろんなこと考えてるんですよ。嫉妬もするし、意地悪もするんです。複雑な感情がある動物なんですけど、飼ったことがない人は知らない。イラストや文章じゃなくてマンガなら、娯楽として広まりやすいしわかってもらいやすいので、すごい下手なんですけど、ひとつの新しい挑戦としてやってみています。

寄付の絵
みっちゃんの絵日記

長い歴史を振り返れば、人間を奴隷として売買する時代もあって、でも最近はそういう差別とかが全部間違いだったことに気づいて正しい方に変わろうとしている時代だと思います。今、私含め全員が動物を蹂躙して生きているけど、次の未来ではきっと「動物も生きてる」っていう当たり前のことに気付く時代が来ると私は思ってるんです。その時代が早く来てほしいな、って。私も動物の犠牲の上に生きている一人ですが、そういうのがなくなっていってほしい。だから、動物関係のことで自分にできることをしたいなって思ってます。

インタビューを受ける谷 小夏さん

「お母さんの言葉が
一番思い出深いプレゼントです。」

今回、自分の作品がQUOカードになるのはどんな気持ちでしたか?

私、自分の絵がすごく好きなんです。だからカードになるのは本当に嬉しかった。
あと、こういうカードだったら、ものすごくプレゼントとして渡しやすくなると思いました。QUOカードってもらうものだと思っていて、人にあげる発想がなかったんです。でも私とか他のアーティストさんの絵柄が入ったものだと、ちゃんと選んだプレゼントになるじゃないですか。「これがかわいいから、あなたのために選んだよ」って言えるようになる。QUOカードをプレゼントするように使う、っていう選択肢が私の中でできました。

私自身があんまり物欲がないせいか、いつも人のプレゼントを選ぶときにすごい困るんです。みんなが何を欲しいのか全くわからなくて、センスあるものもあんまり知らないから…なので今回のカードは、いつもお世話になってる人にプレゼントしたいなと思っています。

谷さんが今まで、プレゼントでもらって思い出に残っているものは。

私、小さな頃、すごく要領が悪くて何もできない子だったんです。しかも、できないとすぐ泣く子で。けど、お母さんがずっと「なっちゃんは、失敗しても絶対諦めずに最後までやるから偉いね」って言って育ててくれたんですよ。だから今でも、私は失敗してもやり遂げるまで頑張れる人、って自分のことを思っていて。絵を描いていてすごい失敗して、本当に落ち込むんですけど、失敗が自分のスタートラインとも思える。お母さんがそうやって育ててくれたから「もう1回頑張ろう」ってなる。そういう自分にしてもらえたのは、言われてた言葉のおかげだなと。だから、お母さんの言葉が一番思い出深いプレゼントです。

自分のことを自分がどう思ってるかって、周りの人の言葉とかに影響されるじゃないですか。私って人見知りなんや、とか。こういう人だねって言われると、性格とか、進路とかもどんどん変わっていくと思うんです。だから、言葉はすごい大事なプレゼントにもなるし、呪いとかをかけちゃうこともある。それでいうと私はすごく、言葉でいい方に育ててもらったなと思います。
私は家族と一緒に暮らしていて、一日中ほとんどの時間を絵を描いて過ごしています。そういう生活ができるのは、家族がずっと応援して支えてくれてるからなんです。そんな家族のみんなにも、感謝をこめてこのカードをあげたいなと思っています。

谷 小夏さん

谷 小夏 Konatsu Tani

1993年大阪生まれ。2016年京都精華大学デザイン学部イラストコース卒業。色鉛筆、ペン、アクリルガッシュ、デジタルなどさまざまな画材で制作。毎年開催している個展で新作を発表するほか、作品の売り上げを動物保護施設へ寄付する「寄付の絵」の活動も行なっている。

アートでつながる。アートをつなぐ。

アーティストの手から生まれた作品を、
あなたの心へ、そして大切なだれかへ。
35周年を記念した、特別なQUOカードです。

QUOカード
QUOカードケース

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アートでつながる。アートをつなぐ。 Konatsu Tani × QUO