株主優待の達人、桐谷さんに聞く「株主優待の魅力」

2019年02月14日

上場会社約4,000社のうち、株主優待制度を実施しているのは、約1,400社。そのうち約400社にQUOカードを優待品として採用していただいています。個人投資家にはちょっとうれしいこの制度、それを日本で一番活用して毎日の生活に役立てている桐谷さんに、「株主優待の魅力」についてうかがいました。

使い勝手の良いQUOカードは優待としても一番

近田 QUOカードはおかげさまで、株主優待品としていろいろな会社にご採用いただいていますが、今日はぜひ率直なご意見をいただければと思います。

桐谷 今、株主優待制度を新設する会社の半分くらいはQUOカードを採用しているんじゃないですか。QUOカードは、日本全国どこでも使い勝手がいいので、優待制度をやるならQUOカードがいいですよとよく言っています。

近田 ありがとうございます。

桐谷 株主優待がいいのは、100株でももらえるというところ。それに配当には税金がかかりますが、株主優待にはかかりません※。今は、自社製品やサービスを持っていない会社では、QUOカードの優待が多いのではないですか?会社にとっても、送るのに送料が抑えられるし、喜んでいただけるし、いいことばかりだと思います。(※株主優待による利益は、原則として雑所得として区分され、一定額を超えると確定申告が必要となります。詳しくは最寄の税務署等へお問い合わせください。)

近田 今、QUOカードは約400社に採用していただいています。優待は個人投資家に長期的に安定的に株を保有していただくための制度として認識されていますね。QUOカードは、優待以外にも、株主総会に来ていただいた投資家へのお土産品などにも使われています。

桐谷 1970年頃は株式の売買の30%が個人投資家でしたが、去年は17.1%に減っています。優待が増えているのは、これで個人投資家を呼び戻そうということもあるのでしょうね。

近田 ところで、桐谷さんはすごい数のQUOカードをお持ちですが、これだけあると使うのが大変ではないですか?

桐谷 そうですね。なかなか使いきれませんが、QUOカードは使用期限がありませんし、持ち歩いてもかさばりません。図書カードNEXTは使用期限があって、残額もわかりづらいのでちょっと不便ですね。QUOカードはいつも財布の中に何枚か入れています。みんなで食事に行ったりするときは1万円のQUOカードをさっと出して払いますし、コンビニでよく使うのは500円のカードですね。株の保有年数が経つと金額がアップしていく会社も多くあります。自社製品ではそうはいかない。

近田 最初にQUOカードを優待に採用していただいたのは東映アニメーションです。今でも使っていただいていますが、アニメキャラクターの4点セットで、マニアにも人気があるそうです。それから、QUOカードには額面金額を自由に設定できる商品もあります。創業年数に合わせたりして、工夫されています。

桐谷 QUOカード以外に、今日使うかもしれない優待券は持ち歩いていますが、かさばって重たいし、優待券や割引券には期限があるのでなかなか使いきれません。食品なども賞味期限があるので、古いものから順番に食べないといけない。

ご自宅から持参していただいたQUOカード。片手では持ちきれないほどある。「オリジナルのきれいな絵柄のものはいいですね」と桐谷さん。

投資の失敗から始まった優待生活

近田 桐谷さんが優待生活を始めたきっかけは何だったのですか?

桐谷 株式投資を始めたのは34年前、バブル時代で、定期預金金利6~8%くらいでしたが株の配当は0.8%くらいでした。当時は優待目当てで買っている人などいませんでした。私は「日活の映画が観られるのはいいかな」と思って日活の株を持っていましたが、優待券で映画が観られる映画館が近くになかったんです。投資していた会社がつぶれると優待券も紙切れになってしまいますし、1990年代の優待にはあまりいい思い出がありませんでした。2000年代になって、カゴメが株式の売買単位を1,000株から100株にして、1,000円の製品を年2回配るというのを新聞で見て、興味を持ち始めました。そのうちQUOカードの優待も出てきて、買い集めるようになりました。2005年には優待のある銘柄を200社くらい持っていて、マネー雑誌の取材も受けるようになり、株でお金持ちになるのは難しいけれど、優待で日本一になろうと思いました。2007年に将棋を引退して、株の勉強を始めた頃は信用取引をやっていたんですが、サブプライム問題があって株が暴落しました。過去100年の歴史で、2回続けて暴落はないということだったので、また信用取引で大量に買ったらリーマンショックが起きてしまいました。お金がなくなって困ったんですが、株があるので優待品だけは届くんですね。それで電車賃もないから自転車で走り回って生活するようになりました。おかげで優待のことにかなり詳しくなって、優待のある株を分散投資するのがいいなということに行き着いたわけです。

近田 なるほど、ちょうど企業が個人投資家を増やしたいということでQUOカードの優待を増やしたという背景もありますね。

桐谷 優待は日本独自の制度で、株主に自社サービスを提供するというのが始まりです。バブルが崩壊して、個人投資家を呼び戻そうと、自社製品やサービスがない会社も優待を始めるようになりました。ところが株主が増えて商品を確保できないということが出てきて、QUOカードに切り替える会社が増えましたね。

近田 私どもの親会社のティーガイアも、株主優待を導入して株主数が5,000人くらいだったのが13,000人くらいまで増えました。特に個人投資家へのアピール力が強いと実感しています。

桐谷 そんなに個人投資家を増やして大丈夫かなあと思うこともありました。でも会社に聞くと、外国人投資家が増えてきたから、日本人の個人投資家を増やしてファンになってほしいと言うんですね。

優待生活は楽しみながら収穫を待つ農業生活

近田 桐谷さんご自身はどのような優待がお好きですか?

桐谷 QUOカードが一番ありがたいですね。腐らないし場所を取らない、きれいな絵柄もあります。反対にその劇場で映画が観たいとか、そこの料理が食べたいとかいう理由でどうしても手放せない優待というのもあります。

近田 優待制度を導入している会社の約25%がQUOカードをご利用いただいています。もっとQUOカードの存在感を増やせるようにしていきたいと思います。株主優待に関する情報はどうやって調べていらっしゃるのですか?

桐谷 夕方に東証適時開示情報を見て、優待については全部手書きでノートに取っていて、いつどんな銘柄が優待をやっているかがわかるようになっています。QUOカードは、利回りを計算しやすいのでありがたいですね。

毎日夕方にネットで優待情報を確認。ノートに細かい字でぎっしりと書かれているが、ほとんどは桐谷さんの頭の中に入っているとのこと。

近田 優待生活の醍醐味、面白さはどのようなことでしょうか?

桐谷 以前は値上がり重視でやっていて、暴落で何回も大変な目に遭いました。値上がりを追求すると下がったときつらいですよ。値上がりを追求するのは"狩り"をやっているようなもので、信用取引はまさに猛獣狩りですね。人間は値上がりで儲かると気が大きくなって、大きく勝負しますが、猛獣狩りで弾をはずすと大けがをするし、時には死にそうな目に遭います。優待は"農業"みたいなもので、優待株を買うというタネをまいて、1年に1回か2回優待(収穫)をもらう。大儲けできないけど堅実な投資といえます。狩りは誰にでもできるわけではないけど、農業なら誰にでもできますしね。それに一人では使いきれないから友達と使ったり、品物をあげたりして喜ばれます。この前、テレビ番組で、「長生きするには人に親切にするのがいい」という外国の研究を紹介していました。優待券を使ってコーヒーや食事をおごったりすれば、それが長生きにつながるし、優待をもらえるから、株が暴落してもハラハラしない。それが元気の素かなあと思います。値上がりより優待をいただく投資のほうが人生も楽しいなと思います。

近田 優待で楽しく長生きする。いいお話ですね。今日のお話を糧にしながら、もっとQUOカードの優待が普及していくよう頑張りたいと思います。今日はありがとうございました。

桐谷 広人(きりたに ひろと)

1949年、広島県出身。
将棋棋士としては七段、2007年引退。個人投資家。独学で投資を学び、将棋引退後は、配当と株主優待品を使って生活する「株主優待生活」を始める。

2013年、テレビのバラエティ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)で度々取り上げられ一躍有名人に。月に10回ほどの講演など忙しい日々を送っている。

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株式優待として「QUOカード」を採用する企業が増えています!

近年、個人投資家を中心に株主優待への注目度は高まっており、株主優待制度を新設する企業数も2011年以降増加傾向が続いています。全上場銘柄4,094件のうち、株主優待制度を実施する企業は1,522件(2019年3月末時点)となり、全体の4割弱が株主優待制度を実施していることになります。野村インベスター・リレーションズの調査によると、株主優待の有無は、投資家の年代にかかわらず投資銘柄を選定するポイントとして重視されており、長期保有志向の株主ほど優待制度の有無を考慮する傾向が強いという結果が出ています。QUOカードは企業にとっては自社をアピールできる優待品として、また投資家にとってもわかりやすく、身近なシーンで利用できる使い勝手の良い優待品として、多くの企業、投資家からご支持いただいています。